「大盗賊」(1963年 東宝)
監督:谷口千吉
特撮:円谷英二
出演:三船敏郎、有島一郎、水野久美、佐藤充、田崎潤、浜美枝、志村喬、天本英世 砂塚秀夫、二瓶正也 ほか
音楽:佐藤 勝
脚本:木村武、関沢新一
いまだにこれがDVD化されないのが不思議でならない。
三船敏郎が「椿三十郎」の翌年に主演した、アクションあり、爆笑あり、特撮ありの時代活劇巨編。
この作品の前後のミスター三船のフィルモグラフィを見てみると、「用心棒」、「椿三十郎」、「天国と地獄」といった
黒澤明監督の代表作がズラリとならんでいる。
同時に岡本喜八監督の作品にも頻繁に登場していた頃で、このあたりから'68年のアメリカ映画 「太平洋の地獄」
でのリー・マーヴィンとの爆笑バトルあたりまでが、ミスターのアクション・スターとしてのキャリアのピークだったと言えるだろう。
東宝時代劇黄金期の遊び心の産物のようなこの「大盗賊」は、円谷英二の特撮を駆使した仙人:有島一郎vs.妖婆:天本英世のマジカル対決シーンや、ミスター三船が敵の牙城に潜入するためハンググライダーで空を飛ぶシーン
まで飛び出す、めちゃめちゃ楽しいトンデモ時代劇だ。
この映画には当時の東宝のスターが続々と登場するが、その配役とキャラクター設定がまた最高に面白い。
その一部をご紹介すると・・・
三船敏郎:
実在の堺の豪商、呂宋助左衛門を大胆にアレンジ。商人なのになぜか剣豪。
海運業で巨万の富を築くが、お上から海賊の嫌疑をかけられ、死罪を宣告される。
(実際には贅沢しすぎて豊臣秀吉の怒りを買ったとか。)
火あぶりの刑から逃れた助左衛門は、財宝を船に積み込んで仲間とともに日本を脱出。
太平洋上で本物の海賊に襲撃されて遭難し、流れ着いた南海の島国で悪党どもを相手に大暴れする。
本物の呂宋助左衛門はルソン島(フィリピン)の日本人町に逃れたのち、カンボジアに渡って再び豪商になったと
伝えられている。
志村喬:
島国の王様。
→この人、最初から最後まで、ほとんど寝てるだけ!
何と贅沢なキャスティングか。
有島一郎:
2級仙人。
→スケベな性格が災いして、高度な術が使えない。
女体を見るたび「あぁあ〜」と悲鳴をあげて高い所から転落。
一見頼りないけど、機転を利かせてたびたび三船を助ける。
天本英世:
魔女!
→変身、飛行、人間の石化(ゴーゴンか!)などの妖術の使い手。
圧倒的パワーで三船たちを迎え撃つ。
浜美枝:
物語の舞台となる架空の島国のプリンセス。
水野久美:
普段は町で飯屋を営んでいるが、正体は女山賊。
→助左衛門に想いを寄せる。
終盤、去って行く三船の背中に向かって叫ぶ「食い逃げ野郎〜!」が切ない。
田崎潤:
気のいい町の暴れん坊。
武術の達人で、王の暗殺を謀る宰相に利用されてしまう。
三船に友情を抱きつつも、立場の対立から対決を余儀なくされる。
佐藤充:
黒海賊団の頭目。悪党だけど女には純情。
こちらも宰相に利用されている。
この俳優が出てくるだけで、アクション映画は面白くなる。
終盤、三十郎三船vs.愚連隊佐藤の夢のカードあり!
中丸忠雄:
宰相←同情の余地のない、絵に描いたような悪人。
勧善懲悪の活劇だから、この設定は重要。
田崎潤、佐藤充、天本英世という東宝映画史上最強のトリオを従えた、悪の軍団のボス。
カッコいいヒーロー、清楚&妖艶2タイプのヒロイン、魅力的なライバル、コミカルな相棒、凶悪で手強い敵の軍団。
面白い活劇に必要なキャラクターが完璧に揃っている。
この映画の脚本は2人のライターが共同執筆しており、よく練られていて非常に完成度が高い。
これ一本に半端なアクション映画100本ぶんの面白さが詰まっていると言っても過言ではないだろう。
学生時代に東宝直営館「伊丹グリーン・ローズ劇場」でのオールナイト上映で出会って以来、すっかりこの作品の
魅力にとりつかれてしまった。
上京後も、浅草の名画座 (馬券購入のための途中退場・再入場チケット制度あり) まで追いかけてみたり、職場の同僚に教えてもらった大泉学園のマニアックなビデオショップ「録影帯」でソフトを発見して大喜びし、繰り返しレンタルしたものだ。
東宝さん、DVD出してください!
↓こちらは貴重な「大盗賊」の予告編
↓「食い逃げ野郎〜!」の水野久美さん